日本政府1000億円を宇宙ビジネスに投入、勝機は?

どうなのか、かなりの不安が少なからずもあるような。

 3月21日、内閣府が主催する宇宙ビジネスシンポジウムが開かれ、宇宙開発利用大賞の発表などさまざまな催しが行われた。筆者も宇宙ベンチャー起業家の方々とともにパネルディスカッションに参加した。

 当日来場した安倍晋三内閣総理大臣から「国家プロジェクトから民間ビジネスのフロンティアへ。この世界的なパラダイムシフトを、わが国が先頭に立って、力強くけん引する。今般政府として、宇宙ベンチャー育成のための新たな支援パッケージをまとめました」との発表があり、注目を集めた。

 支援パッケージは10個の支援策から構成されているが、目玉となるのは政府関係機関による宇宙ビジネス向けのリスクマネー供給拡大であり、具体的には今後5年間で官民合わせて1000億円規模のリスクマネーを宇宙ビジネスに投入することだ。リスクマネーの供給拡大は、2017年に取りまとめを行った「宇宙産業ビジョン2030」で言及されており、それが具体策として打ち出された格好だ。

 それ以外にも、アイデアを持った個人やベンチャー企業と投資家をマッチングするための新たなプラットフォームとして「S-Matching(エス・マッチング)」が発表され、初期メンバーとなった46社および個人が集合した。5月ごろより実際のマッチングがスタートする予定だ。

●インドやニュージーランドなどは商業打ち上げサービスに注目

 日本だけではない。宇宙ビジネスには今、世界各国の政府が熱い視線を送っている。これまで宇宙大国として君臨してきた米国と欧州において民間宇宙ビジネスの動きが強くなっているのはご承知の通りだが、経済発展著しい中国とインドもプレゼンスを拡大しつつある。

 両国とも伝統的な国家主導型の宇宙開発のスタイルではあるが、自国のロケットで他国の衛星を打ち上げる商業サービスも推進している。特にインドは国産の大型ロケット「PSLV」による小型衛星の相乗り打ち上げサービスを積極的に行っており、米Planetなどさまざまな衛星ベンチャー企業が自社衛星の打ち上げに活用している。

 小型ロケットに熱視線を送る国もある。ニュージーランドは小型ロケットの開発と打ち上げを目指す米Rocket Labの自社射場を同国内に建設。今年1月には同社が顧客衛星の軌道投入に初めて成功した。また英国ではSkyrora、ORBEXという新企業が拠点を構えて小型ロケット開発を進めている。いずれも今後拡大が期待される小型衛星の打ち上げ需要を見越した動きだ。

●サウジアラビアやルクセンブルクも

 打ち上げサービスだけではない。30年までに石油依存型経済から脱却し、投資収益と知識集約型産業に基づく国家建設を目指しているサウジアラビアは、政府系ファンドが宇宙旅行サービスを目指す米Virigin Galacticに10億ドルの投資を行った。将来的に宇宙エンタテイメント産業を構築することも視野に入れる。

 また、本コラムでも紹介したルクセンブルクが掲げるテーマは、宇宙空間における商業的な宇宙資源開発だ。「SpaceResources.lu」という名のイニシアチブの下で、既に巨額のリスクマネー供給、法整備、規制環境などを整えて企業誘致を積極的に展開中だ。18年には同国初となる宇宙機関の創設を計画している。

 17年末にはルクセンブルクで欧州初となる民間宇宙ビジネスをテーマにした大規模カンファレンスが開催されたが、米SpaceXでイーロン・マスクCEOを支えるグウィン・ショットウェル社長がわざわざ会場に駆けつけるなど、同国の動きには多くの関係者が注目している。

●日本からメガベンチャーは生まれるか?

 日本には現在20~30の宇宙ベンチャー企業があると言われているが、米国などと比較するとまだまだ少ないのが現状であり、1,000億円規模のリスクマネー供給拡大によりプレイヤー数が増えることが期待される。また、同時に期待されるのが世界で勝てるメガベンチャーの誕生だろう。世界では時価総額が1000億円を超えるといわれるベンチャーも誕生している。激化する世界の宇宙ビジネスにおいて勝てる領域を見極め、日本発のメガベンチャーが生まれることを期待したい。

 他方で、日本では従来宇宙と関係に薄かったさまざまな業種の企業が宇宙ビジネスに興味を示し始めている。今回発表されたS-Matchingの初期メンバーにも多種多様な企業が名前を連ねている。こうした企業の多くはグローバルに事業展開しており、投資をする側に回るケースもあれば、自ら事業を行ったり、技術提供を行ったり、あるいは顧客としてサービスを購入するなど、多様なかかわりの可能性がある。こうした広がりを産業力へと昇華できるかが今後の大きな課題だ。

 最後に、少し紹介させてほしい。筆者自身が2015年から主催をしている宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE2018」が5月10日に開催される。3回目となる今回は「宇宙ビジネスの広がりがあらゆる産業を巻き込む」と題して、30人以上の登壇者を招いて5つのパネル、3つのスピーチおよびスタートアップピッチを行う予定だ。宇宙ビジネスに興味のある多様な方々にお越しいただければ幸いだ。

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