シロアリのアリ塚建設とその集合知能

J・スコット・ターナー教授は、過去26年にわたりシロアリのアリ塚を詳細に研究してきました。ニューヨーク州立大学シラキュース校の環境科学森林学カレッジで動物生理学を教えるターナー氏は、シロアリがどのようにして巨大なアリ塚を築くのか、そのメカニズムを探求しています。シロアリのコロニーは驚異的な建築能力を持ち、数百万匹のシロアリが協力して5メートル以上の高さに達するアリ塚を作り上げます。典型的なアリ塚では、年間250キロの土と数トンの水を運びます。

シロアリはアリやハチのような社会性昆虫で、コロニー全体が一つの巨大な生物のように機能します。個々のシロアリは集合体の一部として動き、個別の指導者がいない中でも共同で建築を進めます。ターナー教授の研究は、この「集合知能」がどのように機能するのかを解明しようとしています。

常に修復可能な体制

シロアリのアリ塚が完成するまでには4〜5年かかりますが、激しい雨によって一部が崩壊することがあります。そのため、シロアリは常にアリ塚の修復に備えて動き回っています。アリ塚に穴が開くと、兵隊アリが防御態勢を取り、働きアリが土を運んで穴を塞ぎます。彼らは空気の動きや湿度、二酸化炭素濃度の変化に敏感に反応し、撹乱の兆候を感じるとすぐに集団で修復に取りかかります。

アリ塚の内部構造

アリ塚の上部を削り取り、内部を分解すると、高密度な土の塊が現れます。これは女王の部屋で、女王は指のように大きく膨れています。働きアリたちは、女王が産む卵を運び、彼女に餌を与え、清潔に保つ役割を担っています。女王はコロニー全体の一部であり、彼女の役割は卵を産み続けることに集中しています。

キノコの栽培

女王の部屋の下には、キノコ農園が広がっています。キノコはセルロースを分解し、シロアリに栄養を提供します。このキノコ農園は、アリ塚の全体的な代謝の85%を占めており、シロアリにとって重要な役割を果たしています。

アリ塚の呼吸機能

ターナー教授は、アリ塚の構造がガス交換のために最適化されていると考えています。アリ塚の尖塔は煙突のように機能するのではなく、むしろ肺のように空気を取り入れ、排出しています。シロアリはコロニーの環境を一定に保つために、常にアリ塚を改良し続けています。

集合知能としてのシロアリ

ハーバード大学のロボット工学教授ラディカ・ナグパルは、シロアリの行動を脳に例えています。個々のシロアリは単に反応しているだけですが、集団としては周囲の環境を認知し、それに基づいて行動しているように見えます。これは脳のニューロンが個別に思考するのではなく、つながりの中で思考が生まれるのと似ています。ターナー教授は、「複雑性を理解しなければ、シロアリの行動を理解することはできない」と述べています。

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